誰が可哀相だなんて言ったのだろうか?
鳥は何も憂える事なく、高い声でさえずっている。
鳥籠の中で生まれた彼を、大空へ放す事の方が残酷ではないかと僕は思う。
緩いアーチを描く籠、扉には花の細工。鳥は鳥籠の事を、自分の為の装飾品くらいにしか思っていないかもしれない。
隙間から指を入れると、良く慣れているその鳥は、首を傾げながら僕に近付いてくる。
これはなんて言う鳥だろう? 彼は僕に教えてくれなかった。小さな、白い鳥。
鳥は僕が動く度にじゃらじゃらと鳴る鎖の音にも怯える事はなかった。僕は頑丈な鎖のついた腕を上げる事に疲れ、鳥籠の傍に座り込んだ。
彼はどうして僕を鎖で繋いだりするんだろう? 逃げ出したりしないのに。たとえ扉を開け放たれても、僕はもう、外の世界を忘れてしまった。
ただ、彼があの扉を開けて入ってくるのを待っている。鳥と僕の為に水と食べ物を与えてくれるのを待っている。僕の鎖を外し、僕の衣服を剥がし、別の拘束具を与えてくれるのを待っている。
でも、毎日訪れていた彼は、一昨日からこの部屋を訪れない。
僕は乾き、飢えていた。鳥には少し余分の餌があり、水入れにはまだ水が残っていた。
僕はまだそれ程理性を失ってはいない。
でもこの数日の内に、僕はこの鳥を引き裂いて、血を飲むかもしれない。僅かな肉をしゃぶるのかもしれない。
彼は来ない。
僕は鳥の脳天気なさえずりを聞きながら、開く事のない扉を凝視する。
彼は、別の可愛い小鳥を見つけてしまったのだろうか?
2002.05.30 |