ねぇ、私達は最初から地球のおなかにある赤い線のこちら側とあちら側を半分コにして、それでずっとうまくやってきたよね。
何もかもをすべて等分する事はできないけど、それでも、あなたにはシロップ漬けのオレンジをチョコレートでコーティングして黒い箱に入れてオレンジに金色で愛の言葉が刻まれたリボンをかけた物、私には信じられなくくらい残酷な方法で凍らせて乾燥させた苺にホワイトチョコレートをかけて、それはエロティックなのにあざとく清純をよそおって白い箱に銀色の細いリボンを飾った物。
血をエポキシ樹脂で固めた目をはめた白いモヘアのうさぎのぬいぐるみと、盗んだ金の指輪を解かして作った目をはめたベルベットの黒猫のぬいぐるみ。
青い硝子で捻り細工の蓋のついた瓶に入った海と空のパヒューム、赤い花の上で羽根を休める蝶の蓋のついた瓶に入った太陽と南国の花の香水。
背中が大きく開いたサテンのドレスはあなたが春の野のようなうぐいす色、私には秋の山野のようなからし色。
浴衣は白地に紺の千鳥が飛ぶ模様と、紺地に白のメダカの模様。
鍵つきの日記帳は赤い表紙と濃紺の表紙のがあって、じゃんけんでどちらを取るか決めたっけ。
真珠のイヤリングと珊瑚の指輪。
フリルがたっぷりついたキャミソールと、薔薇の模様のレースのベビードール。
七センチのヒールの華奢な黒いパンプスと、焦茶色の編み上げのブーツ。
ねぇ、私達はいろいろな物を仲良く分け合って、仲良く暮して来たよね。
同じくらい私達、お互いの事が大好きだったよね。
手を取り合って眠るとあなたの身体が溶けてその熱で私の身体も火をつけられたセルロイドみたいにちりちりと変型して、それから私達は融解しあって、そして朝にはまた分離して再形成されるの。
そんな事を繰り返し繰り返し、私達は老いて骨になって他に身寄りもないから同じお墓に入って、そしてただ一つだけ、お人好しの知り合いに頼むのよ、月に一度、私達の為に二種類のお花をお墓に飾ってちょうだいねって。
ねぇ、私達はそうやって、自分達の国をそれぞれ作りあげて、それは似てるけどまったく同じじゃなくて。私達は同盟国で仲良し。地球のこちら側とあちら側を分けて、それは地球だからまったく同じに分ける事は出来ないけど、でも喧嘩なんかしないでちゃんと平等に半分コできたよね。
チョコレートパフェとフルーツパフェ。違うものだけど価値は同じなの。
昨日までは何もかも二人で分け合えると、思っていたの。
おわり
2004/3 |